スラップタンギングの歴史 Qui a commencé le slap ?
『どうすればスラップタンギングができるようになるの?』というコーナーではないのでご注意ください(笑)
- スラップタンギングを一つの特殊奏法として初めて利用したのは誰なのか? -
現存している録音ではルディ・ヴィードーフによる1900年代初期の頃のものがあるかと思います。そしてそれより少し後にマルセル・ミュールとシガード・ラッシャーによるイベールの室内小協奏曲の録音がありますが、カデンツァの部分でははっきりとしたスラップではないように聞こえます。
イベールのこの曲は現代でもスラップで演奏する人がいたりいなかったりですが、楽譜ではこうなっています。
【ピアノ譜】特に指定がありません。

【パート譜】いわゆるスタッカーティッシモです。

【オーケストラ譜(手書き)】どのような経緯を経てこうなったのかは分かりませんが、手稿では+表記です。

おそらくヴィードーフ以前にもスラップタンギングを扱える人はいたのでしょうが、それはあくまでも奏者のヴィルトゥオーゾの一つ、テクニックとしての一つでしかなかったのでしょう。
または初心者に有りがちなミスとしての認識の方が強かったのかもしれません。
そう、今回私が気になったのは"奏者で初めてスラップ利用した人"ではなく、"作曲家で初めて特殊奏法として利用した人"が誰なのかということです。
この記事でオネゲルの火刑台上のジャンヌ・ダルクを聴いたと書きましたが、実はこのサックスパートにはっきりとスラップの指定があるのです。


イベールの室内小協奏曲の完成が1935年、オネゲルのこのオラトリオの初演が1938年です。
そして、その間の年である1937年には"L'aiglon (鷲の子)"、1938年には"Le Petit Cardinal (小さな枢機卿たち)"の2つのオペラをイベールとオネゲルの2人で共作してることからも、情報共有は密であっただろうことが想像できます。
イベールの作品の中ではカデンツァ中の利用のため、まだヴィルトゥオーゾ的と言えるかもしれませんが、音響効果として初めて利用したのはオネゲルなのではないかというのが私の見解です。
2人のやり取りもかなり興味深いですが、どなたかこの辺りの話を題材にした論文を書いてくれませんかね?笑
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